
不朽の名作として世界中で愛され続けている『サウンド・オブ・ミュージック』。
この物語に心を動かされた方は多いのではないでしょうか。しかし、感動的なストーリーや美しい音楽の裏に隠された、本当のメッセージについて深く考えたことはありますか。
この記事では、多くの人が疑問に思うサウンドオブミュージックが伝えたいことの核心に迫ります。
物語の魅力はもちろん、ネタバレを含むあらすじから、この物語が実話であるという事実、そしてナチス台頭という緊迫した時代背景や、青年ロルフの裏切り、トラップ一家の亡命後まで、作品を多角的に分析し、その深いテーマを解き明かしていきます。
💬 一言アドバイス この作品は、音楽の力で家族の絆を取り戻し、ナチスの圧政に立ち向かう物語。
心温まるミュージカルが好きな人には特におすすめですが、約3時間という長さと歌唱シーンが苦手な人には向きません。
作品情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 劇場公開日 | 1965年3月2日(アメリカ合衆国) |
| 監督 | ロバート・ワイズ |
| 上映時間 | 174分 |
ふむふむ、『サウンドオブミュージック』が伝えたいこと…家族の愛や音楽の力、そしてナチス台頭の影まで絡む深いテーマ。探偵のボクが核心をじっくり調べてみようじゃないか。
サウンドオブミュージックが伝えたいこと:物語の核心
- ネタバレを含むあらすじを紹介
- 心に響く音楽の魅力
- 家族愛というテーマの魅力
- この物語は実話が元になっている
ネタバレを含むあらすじを紹介

『サウンド・オブ・ミュージック』は、歌を愛する自由奔放な修道女見習いマリアの物語から始まります。
彼女は、厳格な規律の修道院での生活になじめず、院長の計らいでトラップ大佐家の7人の子供たちの家庭教師として派遣されることになります。
トラップ家では、妻を亡くした大佐が軍隊式の厳しい規律で子供たちを縛りつけ、家の中には笑顔も歌声もありませんでした。
子供たちは心に寂しさを抱え、いたずらを繰り返しては次々と家庭教師を追い出していましたが、マリアは持ち前の明るさと音楽の力で、次第に子供たちの固く閉ざした心を開かせていきます。
古いカーテンで遊び着を作り、ザルツブルクの美しい自然の中で「ドレミの歌」を教えるうちに、彼らの間には確かな信頼関係が芽生えます。
やがて、子供たちの歌声は、音楽を封印していた大佐の心をも溶かし、一家は失われた笑顔と温かい絆を取り戻します。
マリアと大佐の間にも愛情が芽生え、二人は結婚しますが、幸せな日々にナチス・ドイツによるオーストリア併合の影が忍び寄ります。
祖国を愛し、ナチスへの協力を拒む大佐は、一家での亡命を決意。音楽祭への出演を隠れ蓑に、追手の監視をくぐり抜け、アルプスの山を越えて自由を求める旅に出るのでした。
心に響く音楽の魅力

この作品の根幹を成すのは、間違いなく音楽の力です。
物語の中で歌われる楽曲は、単なる背景音楽や挿入歌ではなく、登場人物の心情を代弁し、物語を大きく前進させる重要な役割を担っています。
例えば、「私のお気に入り(My Favorite Things)」は、雷を怖がる子供たちを元気づけるために歌われ、不安を乗り越えるための心の支えとなります。
また、音楽の楽しさを教える「ドレミの歌」は、子供たちがマリアに心を開くきっかけとなり、家族が再生していく過程を象徴しています。
そして、大佐が祖国への愛を込めて歌う「エーデルワイス」は、ナチスの圧力に屈しない彼の強い意志と、失われゆくオーストリアへの思いを表現し、観る者の胸を打ちます。
このように、音楽は喜びや愛情を育むだけでなく、困難な時代を生き抜くための勇気や希望、そして抵抗の精神をもたらす普遍的な力を持つ存在として描かれているのです。
家族愛というテーマの魅力

『サウンド・オブ・ミュージック』は、血の繋がりだけではない、真の家族の絆がどのように築かれるかを描いた物語です。
物語の冒頭で描かれるトラップ家は、母親の死と父親の厳格さによって心が通わず、冷え切った状態でした。子供たちは愛情に飢え、その寂しさをいたずらで表現するしかありません。
そこへ現れたマリアは、規律ではなく愛情をもって子供たち一人ひとりと向き合います。
彼女がもたらした音楽と温もりは、子供たちだけでなく、妻を失った悲しみから心を閉ざしていた大佐をも変えていきます。
子供たちの歌声に思わず加わるシーンは、彼が失っていた人間性や父親としての愛情を取り戻す象徴的な瞬間です。
最終的にマリアと大佐が結ばれ、子供たちと共に新しい家族となる過程は、互いを理解し、支え合うことの大切さを示唆しています。
ナチスからの逃亡という最大の危機に直面したとき、彼らが一致団結して困難に立ち向かう姿は、音楽を通じて育まれた強い家族の愛の証明と言えるでしょう。
この物語は実話が元になっている
多くの人々を魅了するこの物語が、実在したマリア・フォン・トラップの自叙伝『トラップ・ファミリー合唱団物語』に基づいていることは、作品にさらなる深みを与えています。
ただし、映画は芸術的な脚色が多く加えられており、史実とは異なる点がいくつか存在します。
史実と映画の主な違い
| 項目 | 映画での描写 | 史実 |
|---|---|---|
| 大佐の性格 | 厳格で冷たい人物として描かれる | 温厚で優しい父親だった |
| マリアとの結婚 | 亡命の直前に結婚する | 亡命の11年前(1927年)に結婚 |
| 子供の構成 | 7人の子供(長女が最年長) | 7人の子供(長男が最年長)、マリアとの間に3人 |
| 音楽活動のきっかけ | 家族の絆を深めるため | 金融恐慌で財産を失い、生計を立てるため |
| 亡命の方法 | 音楽祭の後、徒歩でアルプスを越えスイスへ | 演奏旅行を名目に、列車でイタリアへ出国 |
このように、映画では物語をよりドラマチックにするための変更が加えられています。
例えば、大佐を厳格な人物として描くことで、マリアによって心が解放されていく変化が際立ちます。
また、クライマックスのアルプス越えは、自由への困難な道のりを象GN的に表現する感動的なシーンですが、実際の亡命はより計画的なものでした。
これらの違いを知ることで、映画の演出意図と、トラップ一家が実際に生きた壮絶な人生の両方をより深く理解できます。
時代背景から読み解くサウンドオブミュージックが伝えたいこと
- 物語における重要な時代背景
- なぜナチスが登場するのか
- 青年ロルフが象徴するもの
- ロルフの行動は裏切りなのか
- 一家が迎えた亡命後の生活
- 総括:サウンドオブミュージックが伝えたいこと
物語における重要な時代背景
この物語を理解する上で欠かせないのが、1938年のオーストリアを巡る緊迫した歴史的状況です。
当時、アドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツは、その勢力を急速に拡大していました。そして1938年3月、ドイツはオーストリアを併合します。
劇中では、街にハーケンクロイツの旗が掲げられ、人々の会話の中に「ハイル・ヒトラー」という言葉が登場するなど、社会全体がナチスの影響下に置かれていく様子が巧みに描かれています。
多くのオーストリア国民がこの併合を歓迎した一方で、トラップ大佐のように、オーストリアの独立と誇りを重んじ、ナチスの支配に強く反発する人々も存在しました。
この「国家が自由を失っていく」という重苦しい時代背景こそが、トラップ一家の選択に大きな影響を与えます。
単なる家族の物語ではなく、激動の時代に翻弄されながらも、自らの信念を貫こうとする人々のドラマとしての側面を強くしているのです。
なぜナチスが登場するのか

『サウンド・オブ・ミュージック』にナチスが登場するのは、前述の通り、史実に基づいているからですが、物語のテーマを深める上で不可欠な要素となっています。
ナチスは、個人の自由や人間性を抑圧する「脅威」の象徴として描かれます。
一家が育んできた音楽や家族の愛、そして自由な精神は、ナチスの全体主義的な思想とはまさに対極にあるものです。
トラップ大佐にドイツ海軍への出頭命令が下る場面は、個人の良心が国家の命令によって踏みにじられようとする状況を明確に示しています。
ここで彼が下す「亡命」という決断は、単に危険から逃れるためだけでなく、家族の尊厳と自由を守るための積極的な抵抗行為なのです。
もしナチスという存在がなければ、この物語は心温まるホームドラマで終わっていたかもしれません。
しかし、外部からの理不尽な圧力が加わることで、家族の絆が試され、音楽が持つ「抵抗の力」が浮き彫りになります。
これにより、物語は単なる娯楽作品を超え、人間の尊厳と自由への希求という普遍的なメッセージを持つ作品へと昇華されているのです。
青年ロルフが象徴するもの

トラップ家の長女リーズルの恋人である郵便配達の青年ロルフは、この物語において極めて象徴的な役割を担っています。
当初、彼は純粋で少し背伸びしたい年頃の若者として、微笑ましく描かれます。
しかし、物語が進むにつれて、彼はナチスの思想に傾倒し、ヒトラーユーゲント(ナチスの青少年団)の一員となります。
その変化は彼の言動や服装に表れ、かつての純粋さは影を潜め、冷たく硬直した態度が目立つようになります。
リーズルとの関係も、イデオロギーの壁によって引き裂かれてしまいます。
ロルフの変貌は、当時のオーストリアの若者たちが、いかにナチスのプロパガンダに魅了され、取り込まれていったかを示しています。
彼は特別な悪人ではなく、時代の大きな流れに抗えずに飲み込まれてしまった、ごく普通の若者なのです。
彼の存在は、歴史の渦が個人の人生や恋愛といった私的な領域にまで、いかに深く、そして悲劇的に侵食してくるかを観客に突きつけます。
ロルフの行動は裏切りなのか

物語のクライマックス、修道院に隠れるトラップ一家を発見したロルフの行動は、多くの観客に複雑な感情を抱かせます。
リーズルに見つかり、大佐に説得された彼は一瞬ためらいを見せますが、最終的には笛を吹き、上官に一家の居場所を知らせてしまいます。
この行動は、紛れもなく「裏切り」と言えるでしょう。
彼は、愛する人やその家族を守ることよりも、所属する組織(ナチス)への忠誠を優先しました。
個人的な感情よりも、イデオロギーを上位に置くという選択をしたのです。これは、ナチズムが個人の良心や人間関係を破壊する力を持っていたことを示す、痛ましい場面です。
一方で、彼を一方的に断罪できない側面もあります。
17歳という若さで、強力な国家の思想に染まり、上官の命令に逆らうことができなかった彼の弱さは、時代の被害者としての側面も持っています。
彼の葛藤と最終的な選択は、極限状況に置かれた人間がどのような決断を下すのか、そしてその決断がもたらす悲劇性を描き出し、物語に深い陰影を与えています。
一家が迎えた亡命後の生活

映画は、トラップ一家が希望を胸にアルプスの山を越えていくシーンで幕を閉じます。
しかし、彼らの物語はそこで終わりではありません。史実における一家は、アメリカへと亡命し、新たな人生を切り拓いていきました。
亡命後、一家は経済的に困窮しましたが、マリアの提案で家族合唱団「トラップ・ファミリー合唱団」を結成し、本格的な音楽活動を開始します。
ヨーロッパの教会音楽や民謡をレパートリーに全米各地をツアーで巡り、その美しいハーモニーは多くの人々に感銘を与え、高い評価を得ました。
最終的に、彼らはオーストリアの故郷を思わせるバーモント州ストウに定住し、音楽活動を続けながら「トラップ・ファミリー・ロッジ」という宿泊施設を開業しました。
映画では描かれなかった亡命後の人生は、決して平坦な道ではありませんでしたが、音楽と家族の絆を支えに困難を乗り越え、自分たちの居場所を築き上げたのです。
この事実は、映画が描いた希望のメッセージが、現実の人生においても続いていたことを示しています。
総括:サウンドオブミュージックが伝えたいこと
この記事で解説してきた『サウンド・オブ・ミュージック』が伝える核心的なメッセージを、最後に要点としてまとめます。
- 作品の根底にあるのは家族の愛と音楽が持つ力
- 物語は実在のトラップ一家の実話が基になっている
- マリアが音楽を通して子供たちの心を開かせる
- 厳格だった大佐が人間性や愛情を取り戻していく
- 1938年のナチスによるオーストリア併合が時代背景
- ナチスは自由と人間性を脅かす存在として描かれる
- 青年ロルフは時代に翻弄される若者の象徴
- 彼の行動は愛よりもイデオロギーを選んだ裏切り
- 映画のクライマックスであるアルプス越えは象徴的な演出
- 亡命後はアメリカで「トラップ・ファミリー合唱団」として成功
- 「エーデルワイス」は失われゆく祖国への愛の象徴
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